つぎは馬ケ城の森か
馬ケ城の森は道路ひとつを隔てて紺屋田の森の東に広がる170ヘクタールほどの森です。
シデコブシ、サクラバハンノキ、サギソウ、カザグルマなどの生息する貴重な自然が残っているほか、50箇所に上る古窯跡があり、水源涵養保安林にも指定されています。さしあたってこの森に開発の手は迫っていないかに見えます。しかしここではかねてから優良な珪砂の埋蔵が確認されており、かつては実際に6、7軒の石粉業者により珪砂が採掘されていました。
昭和8年に馬ヶ城の森が水源地として利用されることになって20年ほど経った昭和30年ごろ、当時の加藤章瀬戸市長が「水源地で採掘するとは何事であるか」という厳しい姿勢を示したことから採掘地は閉山に追い込まれました。その代替地である中品野鉱山は品質面で馬ケ城に遠く及ばなかったとされ、業界にとっては痛恨の出来事であったようです。(『珪砂組合50年誌』による)
馬ヶ城における珪砂の埋蔵量は瀬戸市での産出量の10年分にのぼり、しかもほかのどの県有林でも産しないA珪砂ばかりであるといいます。
平成15年9月2日の瀬戸市議会における答弁では、瀬戸市は「(珪砂採掘の計画が持ち上がったときは)総合的な判断が必要と認識している」と述べるにとどまり、開発に含みを持たせました。当時の市長の厳しい姿勢とと比較すれば様変わりで、実質的に政策転換がなされているといえそうです。
「それでも水源地でそんな事業は出来ないはずだ」と思われるかもしれません。しかし、馬ケ城の水の大部分は上流の赤津の浄水場から導水されているもので、いま馬ケ城の森から出ているものは決して多くありません。愛知県水への切り替えが進めば自主水源である馬ヶ城は水源涵養保安林の指定を解除される可能性もあります。
瀬戸市の環境経済部長のいう「総合的判断」が環境サイドに重点を置いた発言とは思えないことから、「そんなばかな」ということが紺屋田の森の採掘が終りに近づく数年後に持ち上がってくるかもしれないのです。
そうして数十年後には緑豊かだったこの地は、広大な砂漠の中に住宅地が島のように残っている景観に変わるかもしれません。
|