平成15年10月26日に瀬戸市五位塚町・窯町の珪砂採掘跡地を見ました。愛知県珪砂鉱業協同組合が紺屋田町の説明会で植栽し、10年で回復させた場所として例示したところはここと思われます。
植栽されていたのはヒノキ、ヤマモモ、ウバメガシ、アカマツ、ヤシャブシなどですが、いずれも生育状態はよく、組合の人たちが誇りたくなるのは理解できます。ウバメガシのどんぐりが多いのは印象的で、全体的に樹高が低い現在の環境は日照に恵まれ、ウバメガシにちょうど向いているのかもしれません。
ただ、いくつかの問題があります。「あまり高くなる木は植えてくれるなという地元の意向があって」選んだとされる木の中にヒノキがあるのはなぜでしょうか。ヒノキは紛れもない高木です。すでに下の写真のように数メートルに達したものもあり、あと10年20年のうちに10メートルを超える樹高に達することが予想されます。森は道路を隔てて住宅地の南西側に広がっていますが、このままでは日照をさえぎり、道路に影を落とします。やがて太陽の南中高度が下がる冬季には、住宅地まで日陰になることでしょう。冬の積雪のあとはアイスバーンが長期間消えないかもしれません。
上記の四種が混ざっているとはいえ、植栽の密度は高いので、ヒノキの間隔も数メートルと大変狭まっています。ヒノキが高木に育ったとき、その間隔はますます狭く感じられることでしょう。

第二の問題は下草にほとんど植物がないことです。それは密植された樹種の日陰になっているからではなく、表土がはがされたために極端に土壌が力を失っていることや、そのなかに在来種の種子や根茎が含まれていないことが原因と思われます。種子や根茎は、はがされた表土に無数に含まれていたはずです。それを土壌シードバンクと専門家は呼び、植生回復の鍵としていますが、それはいったいどこに処理されてしまったのでしょうか。
土壌が極端に痩せていることから、この場所では人が植栽したヒノキ、アカマツ、ヤシャブシ、ウバメガシ、ヤマモモしか育っていません。それらはやせ地に強いことで定評のある樹種ばかりで、その意味では適切な選定かもしれません。ただ、自然とは人為に頼らなくても自ずから然りといわれるように、いつかは自律的に回復するものです。その重要な過程は在来種が進入して樹種が増え、下草も豊かになり、昆虫や鳥類をはぐくむようになることでしょう。しかしこの森はまだ自律的な回復の片鱗も見えていません。
三番目の問題は人が植栽した樹木しか育っていない場所を見せて、「森が復活した」という事業者の神経です。これにはかなり違和感を覚えます。