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採掘後に森は再生するか

●植林で取り戻せるものか


 珪砂組合は地元での説明会で、土砂採取跡地に植林をほどこす予定であることを強調していますが、それで回復できる自然とははたしてどのようなものなのでしょうか。
 
 現地にはモンゴリナラの林がありますが、モンゴリナラは痩せて乾燥した稜線の尾根などに多く、低湿な場所には生育しません。今回提示されている埋め戻しは、けっして元の山の形を復元するものではなく、せいぜい採掘後にあまり大きな水溜りができない程度に整地するものです。これではモンゴリナラに適した土地にはなりません。紺屋田の森の北にはすでに採掘が終わって、10年以上放置されている土地が広がっていますが、成育しているのはアカマツとヤハズソウ、メリケンカルカヤなどの外来雑草などで、モンゴリナラの若木は見られません。

 砂礫層の山には湿地植生が見られる場所がありますが、今回の計画ではそのような場所も開発区域に含まれています。その湿地は砂礫層の中に挟まれている不透水層のうえを地下水が流れ、斜面から湧き出ることにより成立するものです。珪砂の採掘は、直接湿地を破壊するだけでなく、地下水の供給源である山そのものをなくしてしまうため、将来に亙って湿生植物が生育する環境は失われてしまいます。

 それでも事業者は森を復元できるというのでしょうか。

●実際の工事跡


  平成15年10月26日に瀬戸市五位塚町・窯町の珪砂採掘跡地を見ました。愛知県珪砂鉱業協同組合が紺屋田町の説明会で植栽し、10年で回復させた場所として例示したところはここと思われます。


 植栽されていたのはヒノキ、ヤマモモ、ウバメガシ、アカマツ、ヤシャブシなどですが、いずれも生育状態はよく、組合の人たちが誇りたくなるのは理解できます。ウバメガシのどんぐりが多いのは印象的で、全体的に樹高が低い現在の環境は日照に恵まれ、ウバメガシにちょうど向いているのかもしれません。

 ただ、いくつかの問題があります。「あまり高くなる木は植えてくれるなという地元の意向があって」選んだとされる木の中にヒノキがあるのはなぜでしょうか。ヒノキは紛れもない高木です。すでに下の写真のように数メートルに達したものもあり、あと10年20年のうちに10メートルを超える樹高に達することが予想されます。森は道路を隔てて住宅地の南西側に広がっていますが、このままでは日照をさえぎり、道路に影を落とします。やがて太陽の南中高度が下がる冬季には、住宅地まで日陰になることでしょう。冬の積雪のあとはアイスバーンが長期間消えないかもしれません。

 上記の四種が混ざっているとはいえ、植栽の密度は高いので、ヒノキの間隔も数メートルと大変狭まっています。ヒノキが高木に育ったとき、その間隔はますます狭く感じられることでしょう。




 第二の問題は下草にほとんど植物がないことです。それは密植された樹種の日陰になっているからではなく、表土がはがされたために極端に土壌が力を失っていることや、そのなかに在来種の種子や根茎が含まれていないことが原因と思われます。種子や根茎は、はがされた表土に無数に含まれていたはずです。それを土壌シードバンクと専門家は呼び、植生回復の鍵としていますが、それはいったいどこに処理されてしまったのでしょうか。

 土壌が極端に痩せていることから、この場所では人が植栽したヒノキ、アカマツ、ヤシャブシ、ウバメガシ、ヤマモモしか育っていません。それらはやせ地に強いことで定評のある樹種ばかりで、その意味では適切な選定かもしれません。ただ、自然とは人為に頼らなくても自ずから然りといわれるように、いつかは自律的に回復するものです。その重要な過程は在来種が進入して樹種が増え、下草も豊かになり、昆虫や鳥類をはぐくむようになることでしょう。しかしこの森はまだ自律的な回復の片鱗も見えていません。

 三番目の問題は人が植栽した樹木しか育っていない場所を見せて、「森が復活した」という事業者の神経です。これにはかなり違和感を覚えます。

●緑色ならニセアカシアでもいいのか


 また事業者側は、説明会においてニセアカシアによる緑化を例示したと伝え聞きます。たしかにニセアカシアならどんな環境でも緑化するかもしれません。しかし、ニセアカシアは下記の記事のとおりわが国の生態系に脅威を与えている外来樹木として、駆除の対象とされている植物です。そのような樹木を使って緑化することで、形の上では木が茂り、緑色が増えたとしても、本当にそれで森を復元したといえるのでしょうか。たとえメダカやフナがいなくなった池にブルーギルやブラックバスを放流しても、誰ももとの池を復元したとは言いません。

 それでは事業者が言う「森林の復元」とは一体何なのでしょうか。疑問は広がるばかりです。


 国土交通省の外来種影響・対策研究会(座長・鷲谷いづみ東大大学院教授)は四日、北米原産の魚ブラックバス(オオクチバス)や広葉樹ハリエンジュ(ニセアカシア)など、地域固有の生き物の生息を脅かす外来種の駆除を含めた対策案を固めた。これを受けて国土交通省は、外来種がとりわけ"猛威"を振るう河川での駆除や、河川周辺の緑化工事で外来植物ではなく在来種を活用するなどの対策に着手。2001年度以降に本格的な対策に乗り出す。

2001年の3/5付け日本経済新聞より




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