拡大適用される鉱業法

●鉱業法の解釈

 佐藤謙一郎衆議院議員の質問主意書に対して国は次のように回答しています。「珪砂については、珪砂が存在する鉱床における二酸化珪素の含有率が七十パーセント未満の場合、鉱業法第三条第一項の珪石には当たらず、鉱業権の設定ができないと解している」と。
 この解釈には大きな問題があります。
 ここは本来ならば、「珪砂が存在する鉱床における珪砂の含有率」というべきところでしょう。ところが「珪砂が存在する鉱床における二酸化珪素の含有率」というとき、それは珪砂だけでなく、資源にならないチャート質の小石もカウントしてしまっているからです。チャートもその95パーセントが二酸化珪素ですが、純粋な二酸化珪素の結晶ではなく生物起源の堆積岩であり、不純物を含むためガラスの原料にはなりません。その用途はせいぜい生コン用です。
 珪砂ならいざしらず、砂利ならどこでも採取は可能です。そのようなものに鉱業法を適用すべきではありません。鉱業法は場合によっては私権を制限し、他人の土地にまで立ち入ることを許すほどの強力な法律なのですから、その適用には十分に慎重でなければならないはずです。濫りに適用すべきではありません。
 したがって上記の鉱業法の解釈には大きな問題があるのです。

●どこでも掘れる珪砂採掘

 紺屋田・印所地区の愛知県有林の場合は周辺で住宅を取得した人たちから次のような声が上がっています。
 「住宅を取得するとき、後背の山は県有林なので掘られることはないと聞いた」
 「この山は資源がないことが分かっているから、掘られることはないと説明を受けた」
 このことから浮かび上がるのは、不動産屋の虚偽説明ではなく、鉱業法の適用範囲が徐々に広げられ、住宅地や市街地の環境を侵食し始めている実態です。
 繰り返しますが、砂利はどこにでもあります。また珪砂=石英の粒ならどこにでも多少は混じっています。河川の堆積物なら大抵どこでも大量の二酸化珪素を含んでいて、その含有率は70パーセント前後に及ぶでしょう。経済産業省の解釈を適用すれば、掘れない所を指摘するほうが難しいくらいです。
 一方業界側にとって、珪砂の採掘も選鉱・精製とは切り離せず、かならず精製設備を必要とする事情があります。掘り出された土砂はいったん精製工場に運ばれ、そこから出荷されますが、トン単価が低いものなので運送コストをいかに抑えるかがポイントです。
 運送コストの低減には過剰積載などの違法なものは別として、「混雑時を避けて搬送する」「人件費の低い労働者を使う」などがありますが、これら固定費をいかに削減しても運送の距離が伸びればそれに比例して変動費が上がり、なけなしのコスト削減効果も吹き飛んでしまいます。したがって業者は精製工場の近隣を採掘したがる傾向があり、いったんそこに精製工場が出来ると、その周辺に鉱物があろうとなかろうと採掘が進んでしまう傾向があるのです。
 手近なところから手当たり次第に採掘を進めたい業界に、経済産業省の鉱業法解釈はありがたいお墨付きを与えるものです。

●鉱業法のコペルニクス的転回

 ここで注意しなければならないのは、資源があるから採掘するという本来の構図がいつのまにか逆転し、業界を維持するために採掘を推し進めるという発想にすり変っていることです。これこそコペルニクス的転回といっても良いでしょう。ただし、この場合は地動説から天動説への間違った転回であることが残念なことです。
 このように理詰めで指摘すると中部経済産業局の鉱業課長は「地元が潤えばそれでいいのだ」と言い放っていますが、そのような姿勢が法の主旨にかなったものか、また本当に地元のためになるものか再考を促したいところです。


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